今回も、ゴールデンウィークに家族で観た映画『セッション(Whiplash)』について話します!前回のディスカッションを見ていない方は、こちらから!
***
フレッチャーの指導は鬼才を育てるか?について議論を始めた前回。
今回は「ジャズ界の歴史を作りたい、Great(偉大)になりたい」と語る主人公ニーマンにとって、フレッチャーの指導は最適だったのかについて考えます!
まだ観ていない方、いまならAmazon Prime で無料です。ぜひ!
***
(前半より続く)
S:ということで、あくまでニーマンにとって良いコーチかどうか。どう思う?
R:そこまで絞ると、肯定したいなあ。フレッチャー個人には共感できないが、その指導法は許容できるかなと。
S:ほう!面白いね。
R:恐らくフレッチャーはそこまで考えてないと思うねんけど、ニーマンに対してはあの指導法がたまたまピッタリ合ってた可能性がある。フレッチャーに、あの指導法が誰に適しているか見極める目はなかったと思うし、だからこそあの指導法により壊れてしまった学生もいるんだろうけど、ニーマンに対しては(たまたま)合っていたんじゃないかな。
S:なんで合ってたと思う?どのタイミングで思ったのかでもいいけど。
R:終わりの方で、舞台袖に戻ってもう一回舞台に帰っていくシーンがあるよな。あそこかな。そこで見せた反骨心(という言葉では表せない感情の大きな動き)で、あの指導法はニーマンには適していたのではないかって思った。
S:それはさ、強烈な上下関係を覆すほどの反骨心が鬼才になるのに必須の条件やからってこと?
R:いや、鬼才になるために全員にとって必須の条件はこの世に存在しないと思う。だけどある人が鬼才になるための条件は多分それぞれにあって、ニーマンの場合はそれが反骨心に火をつけることだったんじゃないかな。
S:なるほどな!ニーマンにとって一番足りなかった部分があの見返してやろうみたいな強烈な反骨心だったと。
R:うんうん。
S:思い返すとフレッチャーは演奏が下手ってだけで怒鳴り散らしてたわけではないよな。
R:うん、そうじゃないと思う。そういえば、彼の反骨心が垣間見えるところって随所にあったわけよ。
S:ほう。
R:例えば家族で喋っているシーンとか。アメフトをやってるお兄ちゃんにバカにされたり、音楽をやっていることが下に見られたりしたときとか。
S:はいはい。
R:そこでなんかすごい言い返してたけど、フレッチャーに対するレベルほどの反骨心は引き出せてなかったよね。
S:それはめちゃくちゃいい視点やな。
R:ほんま?
S:うんうん、フレッチャーしか引き出せなかった反骨心は狂気に近かったと思う。ニーマンがものすごい自動車事故にあったシーンあったやん。演奏会に行く途中の。
R:うん。「演奏会に1秒でも遅れたら正ドラマーの座を交代する。」とフレッチャーに通告されて、交通事故に遭って血だらけになっても会場に向かう場面ね。
S:あそこは狂気を感じたなあ。ニーマンが、頭から血を流してでも出たいと思ったのはなんでなんやろ?別の人に正ドラマーを代えるとか言われても、あそこまでして出たいと思うかなあ。
R:多分な表面的には座を譲りたくないからだけど、たぶんそうじゃない。
S:そうやな、おれもそれは思う。
R:うーん、やっぱりフレッチャーに認められたかったんじゃない?あーでも、認められたいってなんか浅い気がするなちょっと……。
S:なんとなく、あの場面のニーマンに共感できる部分があるわ。中1の時さ、部活の顧問が初めの方ほんまに嫌いやってん。だから週3回くらいしか行ってなかったし、本気でやってなかった。で、中間テスト最終日に部活休もうと思って職員室まで顧問に休みますって言いに行ったのよ。そしたら顧問に「お前そんなんで試合出れると思うなよ」って言われて。しかも職員室の先生みんな見てる中。それがもうめちゃくちゃ腹立って、絶対にぎゃふんと言わせる思ってとった行動が、部活をめちゃくちゃ一生懸命やることやった。
ちょっと似てない??
R:おお、なんかちょっと似てるな、「いやお前はすごい。脱帽した」と言わせたいと。
S:そうそう!しゅうすけはここまでやるんかみたいな、顧問に負けたと言わせようと思ったのよ。その顧問は超いい先生で今でも飲みに連れて行ってくれるんですけどね〜
R:負けを認めさせたいかあ、なるほどいい視点だな。
S:最後のシーンとかまさにそうね。自分の指揮を無視されたことに対してフレッチャーの方が慌てるところ。ニーマンにとっては、フレッチャーとの関係性を乗り越えられた瞬間かな。
R:まさに!そしてここにきてもともとの強烈な上下関係が活きてくる。
S:どういうこと?
R:強烈な上下関係があるからこそ対等になるとか超えるってことにすごくエネルギーがいるわけ。反骨心を引き出すという観点では、強烈な上下関係は良いスパイスだったように思う。
S:なるほどーー。
R:うんじゃまとめに入るか。まとめるとさ、最初に出した問いは、「フレッチャーみたいな鬼教官、教え方は鬼才を生む上で最適なのか」だったと思うんだけど。一般的に良い悪いっていうことは多分言えない。というか、間違いなく全員には当てはまらない。そういう意味では「悪い」し「最適ではない」。
S:そうね、誰にとってもとなると難しいね。
R:でも、ニーマンには「合ってた」。けれど、フレッチャーは誰に対してこの指導法を使えばいいのかっていうのを見る目はなかった。だから、ニーマンにはたまたまうまくハマったけれどそれ以外の多くの犠牲を生んでしまった。
S:そうだと思う。「良いコーチか?」って議論になると別の結論が出そう。選手にかかわらずより良い演奏者に育てられるかってなると微妙やな。
R:つまりスタジオバンドを率いる人としては良くないと。チームを率いるということはつまり大勢を相手にするってことだから、みんなを成長させることは彼の指導法ではできなかった。
S:そうそう。
R:だけど、ニーマンに関してだけを考えると、フレッチャーの存在こそが彼の発達を引き立てたということはできるんじゃないかな。あくまであの場面までの話で、今後の長い人生を考えると本当に受けるべき指導だったのかはわからないけれどもね。
次回どうする?の話
さて第9回は、ここまで読者のみなさんから頂いた質問に答える特別回にしたいと思います!
前回のアンケートに答えてくださったみなさん、ありがとうございました。予想以上にたくさん質問が来て嬉しかったです。
2人でざっくばらんに答えていきます,おたのしみに!
最後までお読みいただきありがとうございました!
下のボタンよりコメントも可能です。ぜひお気軽にお寄せください(ログインが必要な場合があります。登録いただいたアドレスでログインしてください)!
ではまた!